JLPT N1 7/2018 (Read) – 2018年7月日本語能力試験 N1
言語知識(読む)
JLPT N1 7/2018 – Part (Read) with Answers
問題 7 次の文章を読んで、文章全体の趣旨を踏まえて、( 41 ) から ( 45 )の中に入る最もよいもの を、1・2・3・4 から一つ選びなさい。
以下は、作家が書いた文章である。
横暴な小説係
マルチタスク (注 1)という言葉が世の中に行き渡るようになって久しいけれども、自分自身の実 態には程違い身の処し方である。いや、テレビをつけながら、傍らに読みかけの文庫本を置き、上 の空(注 2)でスマートフォンを眺めつつ、晩ごはんは何にしようか、と考えているようなことはた くさんある。そういうことをやたらしてしまうために、わたしは、 自分が同時にいろんなことをや るとすべての物事の達成率が著しく下がってしまっていることを熟知している。
なので以前、自分しか見ないメモ帳には、分別のある自分が「スマホを見るときはテレビを(41)」と書いていた。守ったり、守らなかったりだ。
一日のうちに、いろいろな自分が出没しては退場していく。家事をしている自分、風呂で休んで いる自分、テレビを見たり本を読んだりと娯楽に接している自分、そして仕事をしている自分な ど。それぞれに淡々とがんばっているが、中にはひどい(42)もいる。
わたしがいちばん持て余しているのは「小説を書く係の自分」である。それを職業にしているの に身も蓋もない情けない話なのだが、本当にこいつは扱いにくい。ゲラ(校正紙)を見る係は心配性 なので一日のノルマを越えて仕事をしたりもするし、書評係などは、真面目すぎて気の毒なぐらい 考え込む時がある。随筆係は、ぐずぐずしたところはあるが、そんなに時間帯や備品のコンディシ ョンは問わない。
(43)、小説係は「まずお茶とお菓子だ」などと要求し、真夜中でないと仕事はしないとわがま まである。しかもすぐに気が散って、動物の画像を検索したがる。そして落ち込みやすい。「文筆 課の他の係を見習えよ」とわたしは思う。しかし、この係を中心に結成された文筆課なので、今更 組織図から(44)。
ダメな社内ベンチャーのようなものである。今日もわたしは、小説係のためにお茶を作り、お菓 子を調達し、「とにかく書かないと出来不出来はわからないよ」と(45)。
(注 1) マルチタスク:複数の作業を同時に処理すること
(注 2) 上の空:集中できていない状態
41).
1. 消してもかまわない
2. 消せなくて
3. 消すように
4. 消さないのではないか
42).
1. やつ
2. そいつら
3. そんなやつ
4. そんなやつら
43).
1. ゆえに
2. が
3. とはいえ
4. また
44).
1. 外すべきではなかった
2. 外していないはずだ
3. 外したとは思えない
4. 外すわけにもいかない
45).
1. 励ます
2. 励ましたいのに
3. 励ますからだ
4. 励ましただろうか
Answers :
問題 7
41) 3.
42) 1.
43) 2.
44) 4.
45) 1.